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音楽をもっと自由に 〜音楽理論や作曲のこと〜

1小節のスケッチから曲を作る

私はよく思いついたフレーズや、コードを「作曲ノート」にメモしておく。

忘れないうちにと、いつも走り書きのように雑に書いてしまう。

こんな感じに。

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今回はこの1小節の走り書き、スケッチから曲を作ってみた。

 

今回の私の作曲行程はこんな感じ

①スケッチを書く

②コードを決めてベースラインを作る

③イントロを作る

④アドリブを弾く

 

①スケッチを書く

私は譜面台に「作曲ノート」を置いて思いついたフレーズをいつでも書けるようにしている。

忘れないうちにメモできるので、これはとってもオススメ! 

今回のフレーズは、1小節に12音ある8分音符の3連符を5:7に分けたフレーズだ。

アクセントは1番目と6番目の音符にきて、少しトリッキーな仕組みになっている。

でも不思議なことに意外と普通に聞きやすい。

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②コードを決めてベースラインを作る

次に先ほどのスケッチの下にベースラインをつける。

ベースラインをつけるには、フレーズにあったコードを決めなくてはいけない。

今回はこんな風につけてみた。

これでメインのフレーズの完成!

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③イントロを作る

 

次にイントロを作っていく。

メインのフレーズに入りやすいように同じく3連符で、しかし!リズムを変えて作ってみよう。

先ほどは全部で12音の3連符を5:7で分けたが、今回は4:4:4で分けていく。

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④アドリブを弾く

ここまで来たらもうほとんど出来上がり。

あとは出来るだけシンプルにアドリブを乗せていく。

難しいことは一切なし。

ただただシンプルに。

 

 

こちらが完成した曲。

構造が分かっていると、聴こえ方も違ってくるかも!

Enjoy!!

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4拍子の形?5拍子は星型?

Happy New Year!!

明けましておめでとうございます。

昨年はたくさんの方に読んでいただき、スターをつけていただきありがとうございました。

始めた当初はこんなにたくさんの方に読んでいただけるとは思っておらず(こんなにたくさん音楽理論マニアがいるとは!)自分が一番驚いています。

今年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

色んな人、色んな形

ニューヨークには当たり前だけどお正月がない。

日本人にはどうもなじめないことの一つだ。

みんな大晦日にタイムズスクエアのカウントダウンやパーティーで大騒ぎをして、2日や3日にはもう普通に仕事をしている。

せめて5日くらいまではゴロゴロしていたいなぁといつも思う。

 

ニューヨークの地下鉄に乗っていると、色んな人々を見ることができる。

色んな人種に、色んな言語。

パスタを食べる人、歌う人、バク転をする人、演説をする人に電池を売る人・・・

ちょっと日本では考えられないような、本当に色んな人々だ。

私のピアノの先生は、

”ニューヨークは1ブロック歩く間に3つの違う言葉が聞こえて来る。だからニューヨークが好きなの!”

とよく言っている。

 

それと同じように私たちは普段、色んな形も目にしている。

例えば信号は円や四角だし、ユニクロのロゴやマイクロソフトのロゴも四角い。

広告やポスターにも色んな図形がたくさん使われているし、はてなブログのロゴも丸にペンだしね。

今日は私が考えて使っている拍子図形をご紹介!

 

拍子図形

と言っても、指揮をするときの図形の事ではなくて私の言う拍子図形とは、視覚的に拍子を感じるための図形、それぞれの拍子を表す図形のこと。

私は左右対称が好きで、拍子にはどこか左右対称的な雰囲気が感じられるのでこういう図形になった。

これが私の考える、4拍子の図形であり7拍子の図形だ。

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上段の左から2、3、4、5、下段の左から6、7、8、9拍子になっている、

こう見るとかわいいでしょ?

これを曲を聴くときや演奏する時に思い浮かべる。

全部一筆書きできるようになっているので、是非お試しあれ!

 

でも、もちろん決まりはないから、曲線とか円とかも使って自由に図形を考えてみてほしい。

私は基本的にこの図形を思い浮かべるけど、もっともっと正確に表すなら曲ごとに違う図形になるかもしれない。

だって、この図形じゃどうしたってスウィングできない。

切ないクリスマスソング「River」

北国で育ったせいか、クリスマスにはやはりどうしても雪が見たい。

ニューヨークでは何回か雪が降ったものの積もる程ではないし、今日はずっと雨らしい。

夜更けすぎに雪へと変わればいいんだけど見込みは低そうだ。

そんな時いつも思い出すのが、ジョニ・ミッチェルの「River」。

youtu.be

It's coming on Christmas

クリスマスが近づいてくると

They're cutting down trees

みんなモミの木を切り倒し

They're putting up reindeer

トナカイを飾りつけ

And singing songs of joy and peace

喜びと平和の歌を歌う

Oh I wish I had a river I could skate away on

あぁ 川があれば滑っていけるのに

But it don't snow here

だけど ここは雪が降らない

It stays pretty green

いつまでも緑が残ったまま

I'm going to make a lot of money

一稼ぎして

Then I'm going to quit this crazy scene

こんなクレイジーなところ出ていくの

Oh I wish I had a river I could skate away on

あぁ 川があれば 滑っていけるのに

 

ジョニ・ミッチェルはカナダ出身だから、クリスマスにはやっぱり雪が見たくて、生まれ故郷が恋しくなったのかもしれない。

そしてそこにはきっと川があったんだろう。

ちょっぴり切ない曲だけど、少なくとも私には、鈴の音シャンシャンしてハッピーでたまらないよー!という曲よりこっちの方がしっくりくる。

クリスマスみたいなホリデーシーズンは孤独を感じやすくなると聞いた事があるから、こんなふうにそっと心に寄り添ってくれるような曲は貴重だ。

ジョニ・ミッチェルが、今年のクリスマスを雪景色の中過ごせていますように。

みなさんが素敵なクリスマスを過ごしていますように。

 

Merry Christmas!!

youtu.be

 

 

きよしこの夜の「魔の4小節」

バッハのインヴェンションくらいピアノが弾ける父に「きよしこの夜」のアレンジを頼まれた。

どうやらクリスマスに人前で弾く事になったらしい。 

「きよしこの夜」と言えば、クリスマスソングの定番中の定番。 

でも、実はこの曲、アレンジが地味に難しい。

なぜなら、最初の  ”きーよぉしー こーのよーるー”  の部分は、同じコードが4小節も続いていて変化を出すのが難しいからだ。

itunesやYoutubeなどでいろんな人のアレンジを聴くと、この4小節にいろんな工夫がされていてとても面白い。

シンプルに同じコードを引き続ける人もいれば、ダイアトニックにそってコードを上昇or 下降してみたり(ex. C Dm Em...あるいはC Em/B Am...みたいに)、全く新しいハーモニーになっていたり、ウォーキングベースやブルースっぽくアレンジされているものもたくさんあった。

みんなこの「魔の4小節」に試行錯誤しながら挑んでいる。

 

私なりの「魔の4小節」はこんな感じ。

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気をつけた点

・メロディを壊さないようになるべくシンプルに

・元のコードから離れすぎない

・1−2小節目と3−4小節目が全く同じコードの繰り返しにならない

・5小節目のF7にスムーズに動ける

・ちょっと練習すればすぐに弾けるくらいの難易度

 

ダイアトニックだけど、これだけコードの変化があれば飽きないと思う。

楽器がある方は是非この「魔の4小節」に挑んでみて下さい!

 

ところで、父は弾けるようになったのだろうか・・・

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音のテクスチャー Federico Mompou

テクスチャー

テクスチャーを辞書で引くと、生地、手触り、感触、質感などが出てくる。

それだけ聞くと音楽とは何も関係がなさそうだけど、「テクスチャー(Texture)」という言葉は音楽をやっていると、意外とよく耳にする。

例えば「もっとピアノらしいテクスチャーをストックしておいた方がいい」とか、そん感じによく聞くフレーズだ。

 

音のテクスチャー

たとえば服を作るとか、何か手で触れるものを作る場合の「テクスチャー」は辞書通りの意味でわかるけれど、音になるといまいちピンと来ないと思う。

でも音にも質感があると思いませんか?

たとえば高音域で弾くとキラキラした感じがしたり、低音域で弾くともっと温かみが増したり。(あくまで個人的な見解だけども・・)

音は手で触れないし見ることもできないけど、質感のようなものは存在するはずだ。

コットンやメタルや木だって、どうにかすれば弾けるかもしれない!

音のテクスチャーとは、そういったいろんな質感を出すフレーズだと私は思っている。

 

テクスチャーの作り方

①気になるフレーズをさがす

とは言っても、実体のないものをどうやって作ればいいのかわからない。

そんな時私は、自分の好きな作曲家や曲の印象的なフレーズを借りてくる。

今日はフェデリコ・モンポウ(Federico Mompou)先生の曲を参考にしてみる。

Suburbisの1番、動画の2:19あたり。


低音域から高音域に駆け上がるフレーズ、これを今日の「テクスチャー」にしようと思う。

このフレーズはとてもピアノらしくインパクトもあって華やかなのに、右手と左手を交互に弾くのでそんなに難しくない。

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左手と右手を交互に弾きながら、オクターブ上の全く同じ音を弾いている。

ちょっと試してみるとわかるけど、本当にそんなに難しくない。

 

②自分の好きな音に置き換える

構造が分かったら、次は自分の好きな音にかえてみる。

好きなコードでもスケールでも、なんでもOK。

ただ肝心なのは、自分が弾きやすい事。

これが意外と難しかったりする。

私が置き換えたのはこんな感じ。

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コードとしてはA♭m7

左手が3音、右手が4音で構造は全く一緒。

これでオリジナルテクスチャーが1つ完成。

簡単に弾ける割にはゴージャスに聞こえるので、Am♭7の時にオススメ。

 

③構造を少し変える

さらに発展させたい場合は、音だけでなく構造自体も少し変えてみる。

たとえば音の数を変えてみる。

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これは左手も右手も3音づつで、コードはC7♭9#11。

もっと簡単に言うとCトライド(3和音)の上にF#トライアドを乗せたものだ。

コード感がはっきりしているので、使いやすいと思う。

 

④もっともっと構造を変える

さらにさらに発展させたい場合は、さらにさらに構造を変えてみよう。

音数を左手2音右手3音に変え、右手を固定したまま左手に動きを出してみた。

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次は逆に左手を固定し右手に動きを出してみた。

このままでも十分曲になりそうな効果的な「テクスチャー」ができたと思う。

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たったこれだけの作業でも幾つかのテクスチャーを作る事ができる。

次の作曲や演奏などの機会に、ぜひ「自分のテクスチャー」を織り交ぜてさらにカラフルな曲にしてみて下さい!

 

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Robert Glasperを弾く「Baby Tonight」

ジャンル:ロバート・グラスパー

ロバート・グラスパーは私の好きなピアニストの中でもかなり上位だ。

Balck Radioが出るたびに本当に飛び跳ねるくらい喜んでいる。

何度か機会を逃してしまい、まだ一度しかライブに行った事がないのが残念。

今年は無理でも来年は行こう、必ず行こう!

グラスパーの音楽は何と言っても、カッコイイ!!!

これはジャズだとかヒッピホップだとかに分類するのはナンセンスに思えるほど、彼の音楽はグラスパーそのものなのだ。

我々はついついジャンルに分けたがってしまうけど、私はどちらかというとアーティストそのものが一つのジャンルのように考える方が好きだ。

ビル・エバンスはモダンジャズだけど、どう考えたってそれだけじゃない、彼の音楽はジャンルとしてもビル・エバンスなのだ。

 

グラスパーヴォイシング

グラスパーのカッコよさの肝と言ってもいいのが、彼の美しいヴォイシングだ。

Black Radio2の「Baby Tonight」のヴォイシングを解析してみよう。

コードはほとんどAm7 F#m7 CM7で、ブリッジをはさんでこのコード進行を3パターンのヴォイシングで演奏している。

まずは1つ目

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m7コードのヴォイシングは下からR(Root),7,9,3,11

5度が入っていない代わりに11度が入っているところはビル・エバンスのヴォイシングに近いと言える。

CM7には5度も6度も7度も入っていて、もう全部乗せ状態だ。

 

2つ目

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2つ目のパターンのm7コードのヴォイシングは下から7,9,3,5,7,9,11

かなり音数が多い。

左手は基本的なルート抜きのヴォイシングで、右手はそれぞれG,Eのトライアド(3和音)を押さえている。

やはり印象的なのは11度だが、今回は5度も入ってかなり厚みがある和音になっている。

CM7は9度も加わって、全部のせデラックス状態だ。

 

3つ目

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どれもかなりシンプルになった印象だ。

M7もテンションがなくコードの原型に近い。

 

まとめ

この3つのパターンからグラスパーのヴォイシングの特徴を探すなら、

・m7に11度を入れる

・M7には5度と6度と7度を一緒に入れる

・必ず半音を入れる

こんな感じではないだろうか?

この3つのパターンでこの曲のほとんど弾けるので、ぜひグラスパーと一緒にグラスパーヴォイシングを体感してみて下さい!ぜひ!!

そして、もしm7コードを弾く機会があれば11度をそっと忍ばせてみて下さい。

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(マイクチェックもグラスパーにかかればこんなにカッコよくなるのか・・・)

 

3と4の最小公倍数は13?!

今日は簡単な算数から始めよう。

最小公倍数。

小学校で習ったと思うけど、それぞれの数字の一番小さな共通する倍数の事。

たとえば2と3の最小公倍数は6、そんな感じ。

では3と4の最小公倍数は?

12?もちろん12、数学的には。

ただ、音楽的には13と覚えているといいかもしれない!・・?!

 

問題1:4拍子の上で3拍子のフレーズを演奏すると、次に1拍目で出会うのは何小節目?

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上が簡単な4拍子のフレーズ、下が3拍子のフレーズ。

1拍目から一緒に弾き始めると、次に1拍目で出会うのは2つ目の黄色の所になる。

そこまで4拍子の四角形が3つ、3拍子の三角形が4つ、つまり

3と4の最小公倍数=12だ。

がしかし!出会う拍は13拍目なのだ!

ココ、意外とみんな間違って覚えていたり数えていたりするので、とても重要!

答え:3小節目

 

問題2:4拍子の曲で、12小節のうち4拍子のフレーズと3拍子のフレーズが1拍目に出会う箇所は何箇所?

 

4拍子で12小節なので拍は全部で48拍ある。

そのうち、3と4の公倍数(12の倍数全て)は最小公倍数の12と24、36、48になる。

なので4箇所出会うはずだ。

それでは見ていこう。

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13拍目の4小節目と、25拍目の6小節目と、37拍目の9小節目と、49拍目の・・・49拍目で出会うはずだが、それは13小節目になってしまうのでここにはない。

じゃあ3箇所しかないかと思ったら、計算上では1拍目を見落としてしまっていた。

そう、頭で計算するとどうもズレてしまうことが多いので、これは視覚的に覚えた方がいいと思う。

答え:4箇所

 

それにしても、こんなものどう使うのかと思っていませんか?

そんな方には是非これを聴いていただきたい。

この曲は12小節のマイナーブルースを変形した曲で、ピアノのソロの最初の数コーラスだけピアノは4拍子、ベースとドラムは3拍子という、なんともトリッキーな演奏をしている。

是非みなさんも、スコット・ラファロとポール・モチアンと一緒に4拍子の上で3拍子を数えながら、3と4の公倍数+1の場所でビル・エバンスと出会ってみて下さい。

youtu.be