メジャーモードのコードと特徴と色
前回もサラッと書いたけど、モードにはそれぞれ違ったカラーがあって、どれ1つとして同じものはない。
種類が多いので、何のスケールの何番目っていうのを覚えておくと頭の中が整理できるのでオススメ。メジャースケールの3番目みたいな感じに。(英語では”3rd mode of the major scale”)
また、モードにはそれぞれのモードを表すコードや特徴的な音がある。
今回はメジャースケールのモードを、コードと特徴的な音と一緒に書いていく。
1番目:アイオニアン(Ionian)
音符の間に書いてある、「W」と「H」はそれぞれの音程を表していて、全音=W(whole step)、半音=H(half step)を意味している。
音符の下に書いてある数字は「Scale formula」と呼ばれるもので、直訳すると「スケールの数式?公式?」みたいな意味。
アイオニアンは、全音と半音が[ W W H W W W H]の順で並んでいて、この並びを数字に置きかえると、[ 1234567 ]と表すことができる。
ちなみに、この数字に#や♭が一個も付かないのはこのアイオニアンだけ。Scale formulaを用いて数字でスケールやモードを考える時の基準になるので、アイオニアン=[ 1234567 ](#や♭一個もなし!)と覚えておきたい。
<コードの種類>
・△7 / メジャーセブンス(青い◯がコードトーン)
*このコードの種類は、「このモードを使えるコード」と考えてOK!
<特徴的な音>
・4度(赤い◯)
アイオニアンは、おそらく一番聞き慣れたモードだと思う。メジャーの曲の大部分がアイオニアンで作られている、と言ってもいいんじゃないかな、きっと。特徴的な音は4度なんだけど、△7に対して4度の音はアヴォイドノート(音が濁るので避けた方がいい音)なので、4度を使う時はハーモニーに影響が出ないように、短い音符にするなどの注意が必要!
2番目:ドリアン(Dorian)
<コードの種類>
・m7 / マイナーセブンス
<特徴的な音>
・6度
ドリアンは、マイナーセブンスだけど、明るくも暗くも聴こえる中性的なモード。その鍵になるのがナチュラル6度。ドリアンらしさを出したいときには、6度の音を強調するのがオススメ!個人的には、メジャーの中で一番好きなモード。ドリアンは、一般的にもよく使われる人気者。
(有名なのは「Scarborough Fair」や、「Eleanor Rigby」など)
3番目:フリジアン(Phrygian)
<コードの種類>
・m7 / マイナーセブンス
<特徴的な音>
・♭2度
ドリアンと同じくマイナーセブンスのモード。本来であれば3度マイナーの時に使われて当然のモード(3度マイナー = Em7 in C)だが、3度マイナーの時にはドリアンがの方が合うという考えが主流になって、ドリアンに出番を奪われることの多い不運なモード。♭2度をもつフリジアンは、ちょっぴりエキゾチックで魅力的なモードだ。ドリアンもいいけど、ちょっと違った雰囲気にしたい時にはぜひフリジアンを!
4番目:リディアン(Lydian)
<コードの種類>
・△7 / メジャーセブンス
<特徴的な音>
・#4度(#11)
アイオニアンと同じくメジャーセブンスのモード。アイオニアンと違うのは、4度→#4度になっているとこ。#4度(#11)は、メジャーセブンスに対してアヴォイドノートではないから、使い勝手も非常にGood。△7を見つけたら、とにかくリディアンにしちゃってもいいくらい、いつでもいい感じに仕上げてくれる優れもの。優れもーど。(ジムノペディとか、紅の豚テーマソングもリディアンが多く使われている)
5番目:ミクソリディアン(Mixolydian)
<コードの種類>
・7 / ドミナントセブンス
<特徴的な音>
・7度
メジャースケール唯一のドミナントセブンスのモード。コードトーンと重なっちゃたけど、♭7度が特徴的な音。メジャーモードの中には、ドミナントセブンスのモードはミクソリディアンしかないけど、メロディックマイナーには3種類もあるし、他のスケールにもまだまだある。その中でも、ミクソリディアンは♭7以外#も♭もついていない、一番ノーマルなドミナントセブンスのモード。他のモードは、#や♭が多くてクセが強いけど、ミクソリディアンは一番素直。素直すぎて面白くないと思うちょっとひねくれた方には、メロディックマイナー、ハーモニックマイナーのモードをやるまで待っていただこう。
6番目:エオリアン(Aeolian)
<コードの種類>
・m7 / マイナーセブンス
<特徴的な音>
・♭6度
ドリアンやフリジアンと同じくマイナーセブンスのモード。ドリアンによく似ているが、6度→♭6度になっているので、ドリアンよりも暗く聴こえる。中性的なドリアンよりも、トーンを暗くしたい時にはエオリアンがオススメ。「ナチュラルマイナー」とも呼ばれていて、マイナーの代表格のようにも思われているくらい有名でよく使われている。(ラピュタの「君をのせて」とか、「もののけ姫」の曲もほとんどがエオリアンでできている)
7番目:ロクリアン(Locrian)
<コードの種類>
・m7♭5 / マイナーセブンス
<特徴的な音>
・♭2度、♭5度
マイナーセブンスフラットフィフスというコードの、一番トリッキーなモード。トリッキーさゆえなのか、どうも人気がない。人気がないどころか、狂気じみたサイコパスのようにさえ思われている。気の毒なロクリアンは、ただでさえ出番が少ないのに、ロクリアンナチュラル2の進出によってすっかり影をひそめてしまった。ロクリアンナチュラル2もいいんだけど、ひっそりと出番を待っているロクリアンを忘れずにいたい。(ロクリアンナチュラル2に関する過去の記事)
メジャモードの彩度 or 明度
以上の7つのモードは、それぞれ違う色を持っている。音の色や、暗いとか明るいとかは、人によって感じ方が違うけど、音楽理論的には(ザックリ言うと)#=明るい、♭=暗いとされている。♭が多いければ多いほどより暗くなる。今回はわかりやすく、明るい=暖色、暗い=寒色として、7つのモードを#の多い方から♭の多い順に並べてみる。
並べてみると、同じコードでも明るさに違いがあるのがわかる。たとえば、同じ△7でも、アイオニアンよりリディアンの方が明るいし、同じようにm7の中でもフリジアンが一番暗い。その時々で、どんな色にしたいかによって、それぞれのモードを使い分けることができる。
ドリアンはマイナーコードの中で一番明るく、この明るさランキングのちょうど真ん中に位置している。ドリアンが、メジャーにもマイナーにも聴こえる中性的な感じがするのは、明暗のちょうど真ん中にあるからだろう。
もし今まで、△7=赤、m7=黄色、というふうに一色だけを使っていたのなら、ぜひ他の色も試してみてほしい。きっと、今までとはちがうフレーズやメロディーに出会えるはず。そして、ロクリアンを、ロクリアンを恐れずに、どうか仲良くなってほしい!
(メジャーモード一覧はここからダウンロードできます)
あら野のはてに Angels We Have Heard On High
なんだかバタバタしているうちにクリスマスになってしまった。
今日はこれから教会でクリスマスの曲をいくつか弾くことになっている。
そのためにザッとアレンジしたのが「あら野のはてに(Angels We Have Heard On High)」
時間がなくてリードシートしか作れなかったけど、気になる方はどうぞ!
あと、うちに猫が増えました。
おでこのMにちなんでミミちゃん。
耳も大きい。
破壊神のようにうちの家具や毛布やクリスマスツリーやあらゆるものに噛み付いてズタズタにしています…
#merrychristmas #christmeow 🎄❄️😺😺🎅
Happy Christmas!!
はじめてのモード
音楽理論(あるいはジャズ理論)を勉強していると、モードのあたりでなんだか混乱して脱落してしまう人も多いと思う。
でも、モードって考え方によってはそんなに難しいものではない。
知っているとやっぱり便利だし、きっとあなたの音楽を広げてくれるだろう。
だから今回はその難しそうなモードを、イントロダクションからザックリとした使い方まで、できるだけわかりやすく伝えたいなぁと思ってこれを書き始めた。
できれば5線譜も使わずに。
モードとは
1つのスケールの中に含まれているカラーの違う音の並びのこと。
日本語では「教会旋法(チャーチモード)」と呼ばれるもので、「グレゴリア聖歌」とか「ギリシア旋法」なんていうキーワードも出てくるけど、ここではその性質にフォーカスしたいのでまずカラーの話から始めよう。
モードの絵の具
たとえば、7色入りの絵の具があるとする。
だいたい一通り大事な色が入ってるベーシックな絵の具セット。
もう一つ、同じように7色入りだけど全体のトーンがパステル調の絵の具セット。
この2つの絵の具セットにはそれぞれBasic、Pastelっていうテーマがあって、入っている色は似ているけどトーンが異なる。
一番左はどちらも赤だけどBasicな赤とPastelの赤は色が少し違うよね。
もし他にSmokyとかVividとかの絵の具セットがあったとしても、やっぱりそれぞれの赤はどれも微妙に違うだろう。
この絵の具セットのテーマと入っている絵の具は、そのままスケールとモードの関係に置き換えることができる。
BasicとかPastelとかのテーマがスケールで、その中にある7色の絵の具がモード。
つまりスケールの中には7種類のモードが入っているということ。
そして、どれ一つとして同じ色はない。
そうなるとモードってものすごい種類があるんじゃないかと思うかもしれないけど、実用的なモードを持つ(とくにジャズでよく使われる)スケールはこの4つだけ。
・メジャー(Major)
・メロディックマイナー(Melodic Minor)
・ハーモニックマイナー(Harmonic Minor)
・ハーモニックメジャー (Harmonic Major)
なので
4テーマ(スケール)×7色(モード)=28色(モード)
この28種類のモードさえ理解すれば、あなたもモードの魔術師になれる。
まだいまいちピンと来てないかもしれないので、ちょっとだけ1つ目の絵の具箱「メジャースケール」を開けてみよう。
メジャースケールの絵の具箱
スケールの中にある7種類のモードには、それぞれ名前がついていてどれもラテン語だかギリシャ語だかの難しい名前なんだけど、「エメラルドグリーン」とか「ターコイズブルー」とかの仲間だと思ってもらえると馴染みやすくなるかもしれない。
これがメジャースケールのモードたち。
どれも聞き慣れない名前で、しかもフリジアンとかリディアンとか、みんなちょっとづつ似ててどうにも覚えづらい。
ちなみにビリジアンっていう色があるらしいけど、きっとこの中にひっそり紛れ込んでも誰も気づかないだろう。
使い方(ザックリと)
モードを勉強する上でおそらく一番の謎は、使い方なんじゃないかな。
「ドリアンだとかリディアンだとかの名前をどうにか覚えたけど…それで?一体これで何をするの?」
っていうのがモードの勉強をしていた時の一番の謎だった。
でも、使い方も本当はそんなに難しくなくて、絵の具みたいに気軽に使えるはず。
たとえば、
「水色でなんか描いてみよー」
(ミクソリディアンでなんか弾いてみよー)
とか、
「リンゴを赤じゃなくて緑で描いてみよー」
(△7をイオニアンじゃなくてリディアンで弾いてみよー)
みたいに。
そんなに難しい感じしないよね?そうだよね…?
今日は「はじめてのモード」なのでさらっと書いてきたけど、少しでもモード(さらに音楽理論も!)に興味を持ってもらえたら嬉しい。
モードを理解していると、他の人とは違う自分の音楽を表現しやすくなるし
(みんなはこの色だけど、自分はこっちの色にしよう!みたいに)、音楽がもっともっとカラフルになるだろう。
次回はそれぞれのモードの仕組みと、モードのコード!
きっと!
See you soon!
「Spring Wind」 ポリリズムを弾く
春と呼べる日なんてどれくらいあったんだろ。
長ーくて、寒ーい冬が終わったかと思ったら、もう完全に初夏。
たしか2月くらいに、早く春にならないかなぁと思って「Spring Wind」というタイトルの曲を作ったけど、すっかり季節がずれてしまった。
この曲は前回、前々回の続きで2:3(あるいは3:2)のポリリズムをマスターするための練習曲として作った。
いざポリリズムをマスターするぞ!と思っても(ポリリズムだけじゃなくて何にでも言えることだけど)なかなかちょうど良い練習曲が見つからなかったりする。
そんな時は、自分に必要な曲を自分で作っちゃうのが一番。
壮大な曲にする必要もないし、音楽的にとても優れてる必要もない。
ただ自分に必要なものを自分の好きなように作っていけば良い。
だって自分のための曲だからね。
そんなわけで今回は私のポリリズム練習曲「Spring Wind」をご紹介!
Spring Wind
お気づきのようにこの曲は2:3(あるいは3:2)のポリリズムとその仲間たちでできている。
2:3(あるいは3:2)をベースに全部で9種類のポリリズムがこれでもかと出てくるので、嫌でも身についてしまうはず。
9種類のポリリズム
① 2:3 (右手が8分音符2つ、左手が8分音符の3連符)
前回、前々回とやってきた2:3の基本形。
② 3:2 (右手が8分音符の3連符、左手が8分音符2つ)
これも前回、前々回とやってきた3:2の基本形。
③ 2:3 (右手が8分音符2つ、左手が8分音符の3連符で2音目を分割)
2:3の仲間。
左手の3連符の2音目を分割して16分音符2つにする。
分割した16分音符の2つめが、ちょうど右手の2音目と同じタイミングになる。
④ 3:2 (右手が8分音符の3連符で2音目を分割、左手が8分音符2つ)
3:2の仲間で③の左右逆バージョン。
これも右手の分割した16分音符の2つめが、左手の2音目と同じタイミングになる。
⑤ 2(6):3 (右手が8分音符2つ+16分音符の6連符、左手が8分音符の3連符)
2:3の仲間。
右手が16分音符の6連符で、3音づつ2グループに分かれている。
6連符の1、3、5音目で左手の3連符それぞれと出会う。
⑥ 3(6):2 (右手が8分音符の3連符+16分音符の6連符、左手が8分音符2つ)
3:2の仲間。
⑤と同様右手が16分音符の6連符だけど、こちらは2音づつ3グループに分かれている。
6連符の1、4音目で左手の8分音符と出会う。
⑦ 3(6):2(6) (右手が8分音符の3連符+16分音符の6連符、左手が8分音符2つ+16分音符の6連符)
3:2の仲間。
右手は⑥と同じで、左手は16分音符の6連符。
左右弾いている音数は同じだけど、右手は2音づつ3グループ、左手は3音づつ2グループに分かれている。
一見簡単そうだけど、メロディとベース音が3:2になっているのでちょっとくせ者。
右手のメロディは左手と1、3、5音目出会い、左手のベース音は右手と1、4音目と出会う。
⑧ 3(12):4 (右手が4分音符の3連符+16分音符の6連符が2つ、左手が8分音符4つ)
これは2:3じゃなくて、3:4のポリリズム!!
今までと違って1拍分じゃなくて2拍分の大きなポリリズムで、右手は16分音符の6連符が2つ、その12音を4音づつの3グループに分けている。
左手のベース音は右手の6連符の1、4音目と出会うので、そのタイミングに気をつければきっとスムーズに3:4のポリリズムもマスターできるはず。
⑨ 3(12):2 (右手が4分音符の3連符+16分音符の6連符が2つ、左手が4分音符2つ)
3:2の仲間。
これも2拍分の大きなポリリズムで、右手は⑧と同じ。
左手が4分音符2つしかないので間が空く分リズムがブレやすい。
右手の6連符の1音目で左手と出会うので、そのタイミングに気をつけるとGood。
1拍分のポリリズムと2拍分のポリリズムを使いこなせたら、もう2:3(あるいは3:2)マスターと言ってもいい!
It's your turn!
「はじめてのポリリズム」ということで前回、前々回と3回に渡って2:3(あるいは3:2)のポリリズムを勉強してきたけど、少しでも興味が湧いたり、仕組みがなんとなくでも理解してもらえたら嬉しい。
ポリリズムと聞くと難しいイメージだけど簡単な算数ができれば、全然難しいものじゃない。
今回は私が作ったポリリズムの練習曲をご紹介してきたけど、次はあなたのポリリズム練習曲を聴かせてほしい!
どんな曲でもいい、シンプルで全然構わない。
きっと私の練習曲より、あなたにとって素敵なものになるハズ!
「Spring wind」を弾いてみたい方はこちらからフリーダウンロードできるので、ぜひ!
Enjoy!!
p.s.
韓国映画「イルマーレ」のアメリカ版「The Lake House」に使われているブラッド・メルドーの曲が、2:3(あるいは3:2)のポリリズム(2拍分の大きなポリリズム、0:55~)だったのでcheck it out!!
ポリリズム 2:3と3:2
前回の例にも出したけど、ドビュッシーのアラベスク第一番のようなリズムを3:2のポリリズムという。
1拍に対して右手は8分音符3つ、左手は2つ。
この曲を弾いた事がある人も多いかもしれないが、リズムはきちんと弾けているかな?
なんとなく左手の音にぶつからないように左右ずらして弾いちゃってたりはしてない?
思わずギクッとしちゃった人は、ポリリズムを身につけるともっとステキな演奏ができるかもしれない。
今日は3:2(右3:左2)、2:3(右2:左3)それぞれの仕組みと練習法を考えていく。
仕組み
2:3(あるいは3:2)のポリリズムを作るのに必要なのは、2と3の最小公倍数。
つまり6。
6コの音があれば2:3(あるいは3:2)のポリリズムを作る事ができる。
<材料>
・6コの音
<2:3の作り方>
①左手パートに2:3の3にしたい音符を3コ並べる
②並べた3コの音符を6等分したものを右手パートに並べる(1コを2等分)
③6等分した音符を3コづつ2つのグループに分ける
(わかりやすいように3コづつっぽいフレーズに変えているよ!)
④それぞれのグループのあたま1、4にアクセントをつけ他の音を弱くしていく
⑤アクセントをつけた1、4だけ弾ければ完成!!
<3:2の作り方>
①左手パートに3:2の2にしたい音符を2コ並べる
②並べた2コの音符を6等分して右手パートに並べる(1コを3等分)
③6等分した音符を2コづつ3つのにグループ分ける
(これもわかりやすいように2コづつっぽいフレーズに変えているよ!)
④それぞれのグループのあたま1、3、5にアクセントをつけ他の音を弱くしていく
⑤アクセントをつけた1、3、5だけ弾ければ完成!!
弾き方
コツは、6コの細かい音符を感じること。
左右バラバラに思えるけど、弾いていない細かい音符で本当は出会っているのだ!
その2と3が出会う場所を感じられると、偏りのないキレイなリズムになる。
<2:3練習法>
①右6:左3の簡単なスケールを作る *点線は2と3が出会う場所
(右6=3+3のようなフレーズがGood!!)
②右6の1と4にアクセントをつけ他の音を弱くしていく
③アクセントをつけた1、4だけ弾く
<3:2練習法>
①右6:左2の簡単なスケールを作る *点線は2と3が出会う場所
(右6=2+2+2のようなフレーズがGood!!)
②右6の1、3、5にアクセントをつけ他の音を弱くしていく
(点線は3と2が出会う場所)
③アクセントをつけた1、3、5だけ弾く
再びアラベスク
3:2の練習法に当てはめて、もう一度ドビュッシーのアラベスク第一番を考えてみる。
まずは右手のメロディーに音を足して細かい16分音符の6連符にする。
(点線は3と2が出会う場所、4拍目以降も同じ)
6連符の1、3、5にアクセントをつけ他の音を弱くしていく
アクセントをつけた1、3、5だけ弾く
なんとなく弾くのと、意識して弾くのではなにか違いはあったかな?
正確なリズムこそが美しいとは思わないけど、仕組みがわかっている方が安定したリズムを演奏できるのは確か。
それにリズムみたいな感覚的なものは、一度身につけてしまえば体がずっと覚えていてくれるので、覚えといて損はない。
自転車や平泳ぎみたいにね。
2:3や3:2のポリリズムは部分的なものも含めると、本当にあらゆるジャンルのあらゆる音楽に使われている。
(私の好きなドラゴンボールのDragon Soulにだって部分的に何度も使われている!)
意識して聴いてみると、きっと色んな曲の中にこのポリリズムを見つけることができると思うので、いつもと少し違う角度から音楽を聴いてみるのも良いかもしれない。
次回は、2:3と3:2のポリリズムを弾きこなす!
はじめてのポリリズム
「ポリリズム」とは
複数を意味するポリ(poly) +リズム(rhythm)が合わさった言葉で、複数の異なるリズムを同時に演奏する事。
わかりやすいので言えば、ドビュッシーのアラベスク第1番。
1拍に対して右手は3連符だから8分音符3つ、左手は8分音符2つで、3:2のポリリズム。
それぞれ拍のあたまで左右一緒になる。
<アラベスク第1番>
わかりづらいので言えば菊地成孔率いるDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN (DC/PRG)の 「構造I (現代呪術の構造)」。
これは5拍子の上に4拍子がのっているようなポリリズム。
< 構造I (現代呪術の構造)> 視聴
1小節の中に20コある16分音符を5コづつグルーピングすると4拍子(上段)、4コづつグルーピングすると5拍子(下段)になる。
つまり上段は大きく4連符とも言えるし、1拍=16分音符5コの4拍子とも言える。
そしてこの4拍子の拍のあたまにちゃんとベースの音がはまっていて、キレイに作られている。
とても複雑なポリリズムだけど、これがもしどちらも4分の4拍子で割り切れていたらどんなに味気ないものになっていただろう。
そう、ポリリズムはできるとかっこいいのだ!
でも「はじめてのポリリズム」なのでこんな恐ろしいリズムじゃなくてシンプルなものからはじめていくよ!
次回は「ポリリズム2:3」(の予定)
Robert Glasperを弾く 「Stella By Starlight」
Stella By Starlight
邦題「星影のステラ」と呼ばれている最も有名なジャズスタンダードのひとつ。
元々はVictor Youngが"The Uninvited"という映画のために作った曲で、マイルス・デイヴィスやエラ・フィッツジェラルドをはじめ、多くのジャズメンに演奏されてきた。
ジャムセッションでもよくコールされるので、演奏したことがある方も多いかと思う。
私の中でも、好きなジャズスタンダードTOP10に確実に入ってくる。
今回はこのおなじみの"Stella By Starlight"を、あまりおなじみではないロバート・グラスパーバージョンで弾いてみよう。
構成
この曲は"covered"というアルバムに収録されている。
先日行ったRobert Glasper Trio @ THE METの時にも同じメンバーで演奏していて、ブリッジの部分をループしたり、パッと聴いただけでは聞き取れないようなリハモをしていたりと、とても印象的だった。
これはリアルブックに載っている楽譜。
一般的にジャズは、[テーマ]→[インプロ](improvisation:アドリブのこと)→[テーマ]という形で演奏される。
この曲の場合も・・・
[テーマ : A B C]→[インプロ : A B C] × くり返し→[テーマ : A B C]
と演奏されるのが一般的だが、グラスパーは・・・
[テーマ : A B C]→[インプロ : B] × くり返し→[テーマ : C]→[エンディング] × くり返し
と少し変わった構成で演奏している。
Bのインプロセクションやエンディングのループがとてもグラスパーらしい。
この曲は本当にたくさんの人にカヴァーされているけど、自分の音楽にするという意味でグラスパーバージョンはとても成功しているアレンジだと思う。
コード
グラスパーらしさの最も重要な要素は、なんと言ってもあの美しいハーモニー。
何度となく聴いたことがある曲を、全く新しい音楽に変えてしまう魔法のようなグラスパーのリハモ(reharmonization:元のコードを別のコードに変えること)。
この曲でとくにリハモされているのは[Bセクション]と[Cセクション]、そして[エンディングのループ]。
リアルブックに載っている元のコードと見比べていこう。
[Bセクション]
グラスパーコードの方はベース音が半音づつ下降していて、とてもスムーズなリハモになっている。
[Cセクション]
こちらのグラスパーコードも上段はBセクション同様半音づつ下降しているが、下段1小節目D♭△7に一度解決し、またすぐ3小節目B♭△7に解決しているのでマルチトニック的とも言える。(一つの曲に複数のトニックがあること)
[エンディングのループ]
最後の小節のB△7(#11)がポイント!
ここは本来B♭△7に行くはずなのに、その半音上をいく。
予想外でオシャレでカッチョ良い。
(拍子が変わっているので元の楽譜の2小節分が1小節になっている)
では実際どんな音を弾いているのか、ヴォイシングを見てみよう。
ヴォイシング
グラスパーのヴォイシングの特徴一つはテンションの多さ。
前にもグラスパーのハーモニーの特徴について書いたことがあるけど(Robert Glasperを弾く「Baby Tonight」)、やはり今回も6thや9th、11thが多い。
まずは音源を聴きながら一緒に楽譜を見ていこう。
[Bセクション] (視聴)
[Cセクション](視聴 )
6thや7th、時には([Bセクション]1段目の最後の小節のD♭△7#11のように)9thや#11thまで一緒に弾いてしまうのだ。
7thか6thどちらかが入ってればもう片方は省いてしまいそうだけど、両方いっぺんに弾くとよりグラスパー的なサウンドが作れる。
あと-7の時の11thはもうMUSTと言ってもいいだろう。
好みもあると思うけど、11thが入っていた方が断然今っぽいし、これからはこっちのヴォイシングの方が主流になってくるんじゃないかと思う。
もう一つの特徴は和音の近さ。
一つの和音の構成音が多く、さらにそれらが密集して半音や全音でぶつかることが多い。
同時になる音が近ければ近いほど、それぞれの音がぼやけて聞こえるので、グラスパー特有のぼんやりとした抽象的なサウンドが作れる。
あと、これはハーモニーとは別の話だけど、音符の横にある"なみなみの縦線"も特徴の一つと言えるだろう。
これはArppegio(アルペジオ、あるいはアルペッジョ)という記号で、和音をハープのようにポロロンと弾く記号。
矢印がついてるものとついていないものがあって、ついていないものは下から上へ弾くことが多い。
グラスパーはこの奏法を(上の楽譜を見ればわかるように)本当によく使う。
Arppegio自体は全然難しくないので、グラスパーっぽく弾きたい人は取り入れてみるといいかもしれない。
オリジナルの"Stella By Starlight"も十分美しい曲だけど、いつもと違ったアレンジで演奏してみたい方はぜひロバート・グラスパーバージョンを試してみてください!
*リードシートを作ったので参考にどうぞ*
Stella By Starlight (Robert Glasper ver.) in C