コルトレーンチェンジ しくみ編
今年はJhon Coltrane没後50年という記念すべき年のようで、ニューヨークではあちこちでコルトレーンにちなんだコンサートが開かれている。
その中の一つ、Dave Liebman Big Bandのコルトレーンツアー最終日にDizzy's clubというジャズクラブに行ってきた。
Equinoxやseraphic lightなどのコルトレーンの曲を中心に、コルトレーン(あるいはJR東海)でお馴染みのMy Favorite Thingsなんかも、3/4拍子じゃなく4/4拍子のイケイケなアレンジで演奏していた。
友人であるピアニストのJim RidlがフューチャーされたNaimaなんてもう本当に鳥肌もので、改めてコルトレーンの曲の美しさを体感した。
今日はそのコルトレーン独特の美しさに迫るべくコルトレーンチェンジについて深めていこう。
しくみ
コルトレーンチェンジというのは、ざっくり言うと長3度の関係にある3つのキーを自由に移動するようなシステムの事
長3度の関係というのは、こういう事。
長3度の関係は、全部で4グループ作れる。
この同じグループ内を上手く移動していくと、あっという間にコルトレーンチェンジの出来上がり。
例えばkeyCのツーファイブワン(Key C: Dm7 - G7 - Cという終始の形)をコルトレーンチェンジにするとこうなる。
Cを含む長3度のグループは上の図にもあるけど、C、E、A♭の三つ。
ピンクの部分がC、イエローがE、ブルーがA♭。
Coltrane Changes1ではC→A♭→E→C、Coltrane Changes2ではC→E→A♭→Cと長3度のグループ内を一周している。
Coltraneの曲の中ではColtrane Changes1の形の方がよく使われているが、おそらくどっち周りでもいいと私は思っている。
仕組みが掴めたところで、実際のコルトレーンの曲を見ていこう。
Giant Steps
この曲の長3度グループはB、G、E♭の三つ。
コルトレーンチェンジを知らないと、なんだかやたらと転調するワケのわからない曲に思えるかもしれないけど、知っているととてもロジカルに作られているのがわかる。
見事なまでに三色に分かれている。
では、このコルトレーンチェンジを一体どう使えばいいのか?
次回はコルトレーンチェンジの応用編、アドリブと作曲に使う方法!(たぶん・・・)
#daveliebman #bigband #dizzysclub #celebrate #johncoltrane #amazing #pianist #jimridl
(前列の左の方でソプラノサックスを吹いているのがDave Liebman。ちょうどMy Favorite Thingsを演奏していた)
音のテクスチャー Stefano Battaglia
Stefano Battaglia (ステファノ・バッターリア)
イタリアのミラノ出身のピアニスト。
何年か前にECM好きのドラマーの友人にすすめられて聴いたのが初めてだった。
ECM的なサウンドはもちろん、テクニックも素晴らしいピアニストだ。
今日は彼のテクニカルな部分を音のテクスチャーとしてご紹介。
(前回の音のテクスチャーFederico Mompouはこちら)
The Real Meaning (Of the Blues) / Stefano Battaglia
まずは聴いてみよう→視聴
速くて何がなんだかわからないけど、とってもゴージャスでテンションが上がる。
音符だけみるとそんなに複雑ではないけど、これをあの速さで弾くとなるとなかなかのテクニックが必要だ。
右手と左手の音の振り分けが違うかもしれないけど、おそらくこんな感じだと思うので、今日はこのテクスチャーをマスターしていこう!
1. 分析
まずはどうなってるのか構造をみていこう。
右手は8分音符、左手は16分音符の6連符。
6連符の1つ目と3つ目が休符になっていて、ちょうど右手の8分音符の間に左手の音が2つ入るような形になっている。
これを弾いてみるとわかるのだが、両手の位置がとても近く最初は弾きづらい。
なので両手を前後?上下?に重ねるように弾くのがコツ。
ちなみに私は左手が上派。
2. 分解
弾きやすい形にして、練習用スケールを作る。
音数を減らしたり手がぶつからずに弾ける音を選んだり、とにかく自分が弾きやすい事が一番大事。
今回はCドリアンで練習してみよう。
ちょうど縫い物や編み物みたいな形だけど、左右1音ずつにしたので速いテンポでも弾きやすい。
まずはここから慣れてみよう。
これが弾けるようになったら、左手の音数を増やしていこう。
6連符にして左手2音。
32分音符にして左手3音。
あとは、右手の和音の音を増やしてみたり。
Cドリアンだと弾きづらいのでDドリアンに変更。
3. 再構築
スケールでマスターしたこの形を使って好きなフレーズを作っていく。
ちょっとトゲトゲした感じとかキラキラ系のフレーズもこのテクスチャーなら簡単に作れるし、ゴージャスに聞こえるのでみんなをハッとさせられる事間違いなし。
アドリブで使うならこんな感じとか
作曲だったらこんな感じとか。
是非Battaglia流テクスチャーをアドリブや作曲のアイディアに使って見て下さい!
Smoke Gets In Your Eyes
煙が目にしみる
誰もが知っているジェローム・カーンの美しいバラード。
歌詞も切なくって、
-When a lovely flame dies, Smoke gets in your eyes.
-恋の炎が消えた時 煙が目にしみる
要するに失恋して泣いてるのだろうけど、とっても素敵な言い回しだ。
今回はこの「Smoke Gets In Your Eyes」の3連符練習用ソロピアノアレンジが完成したので、ご紹介しよう。
まずこちらが出来上がったアレンジ。
ポイント1:ポリリズム的3連符
販売している関係で残念ながら全てをお見せできないのだけど、いたるところに3連符が散りばめられているのがわかるだろうか?
今回のポイントはただの3連符じゃなくて、8分音符と一緒に弾くポリリズム的3連符。
たとえばこんな感じ。
左手が8分音符、右手が3連符という異なるリズムを同時に弾いている、わかりやすいポリリズムだ。
これはちょうどドビュッシーのアラベスク第1番と同じリズムになる。
簡単そうに見えるかもしれないけど、慣れていないとなかなかキレイに弾くのが難しいし、異なるリズムが同時に演奏されることで複雑に聞こえる。
こちらも同じく左手が8分音符、右手が3連符。
ピアノが手元にある人はぜひ音を出してみて欲しい。
E♭m7からDM7に移るところがお気に入りポイント!
これはリズムが逆になって左手が3連符、右手が8分音符。
この曲のアレンジの中で一番好きな箇所!
この両方のリズムをマスターすると、きっと演奏や作曲の幅が広がること間違いなし!
最初は難しいかもしれないけど、私の先生曰く、こういうのは自転車や水泳と同じで一回覚えてしまえば体が忘れることはないそうだ。
ポイント2:M7♭13(メジャーセブンフラットサーティーン)
あまり見かけないコードかもしれないけど、とってもいい音なので是非オススメしたい。
調号が見えないのでわかりづらいけど、この曲はキーがF(ヘ長調)なのでBが♭になる。
このB♭がこのコードでいう♭13の音。
このコードはハーモニックメジャーというスケールの1番目のモードだ。
(詳しくはまたの機会に...)
メジャー7ていうキレイなコードに♭13なんか入れたくないよ、と思うかもしれないけどこれがいい!
私はこういう音の事を勝手に”深みの一音”とよんでいるのだけど、これが入るのと入らないのでは奥行き感が全然違う。
コーヒーでいうコク、ビールでいうのどごし?!なのだ!
もちろん好みもあるので苦手な人もいるかもしれないけど、ぜひ試してほしい。
3連符のポリリズムとメジャーセブンフラットサーティーンをマスターしたい方は、「Smoke Gets In Your Eyes」に挑戦してみて下さい。
楽譜はこちらからSheet Music Plus
キレイなアドリブをとるための2つのコツ(初級)
アドリブ
アドリブとはジャズなどでよく使われる即興演奏のこと。
英語ではimprovisation(即興演奏)、improvise(即興演奏する)という。
私が初めてアドリブを見たのはまだ高校生の頃だったと思う。
たまたま訪れたホテルのラウンジでピアノ&ダブルベースのデュオがジャズを演奏していた。
コードだけ書かれた小さな楽譜を見ながら延々と演奏しているのを見て、不思議でたまらなかった事を覚えてる。
ピノキオの『星に願いを』を演奏していたのだが、メロディが聞こえたかと思うとすぐに別のメロディが次から次へと溢れてきて、あれ?違う曲かな?と思っているうちにまた聞き慣れたメロディが戻ってくる。
高校生の私には、それがとても不思議で、とてもカッコよかった。
キレイなアドリブのコツ(初級)
ここでいう”キレイなアドリブ”というのは、デタラメではなく聞きやすいアドリブという意味。
アドリブの醍醐味は何と言っても自由さだけど、デタラメになってしまってはせっかくのアドリブも意味がなくなってしまう。
このコツはアドリブだけじゃなく作曲にも役立つので、是非覚えておいてほしい。
それがこの2つ
・コードがわかるフレーズを作る
・コードチェンジをスムーズにする
① コードがわかるフレーズを作る
フレーズだけ聞いても何のコードだよくわからないアドリブは、難解で聞きづらくなってしまう。
例えば左のフレーズはコードの判別が難しいけど、右のフレーズはCm7だと判別する事ができる。
なので、最初はコードが分かるようにコードトーンだけでアドリブをとるのがオススメ。
まずはコードトーンの確認。
Root、3、5、7度
次に9度まで確認。
3、5、7、9度
コードトーンが確認できたら次のステップ。
② コードチェンジをスムーズにする
コレはとってもとっても重要なコツだけど、なぜかあまり誰も教えてくれない。
でも本当にとっても重要。
コードチェンジをスムーズにするというのは、次のコードに移る時に次のコードのコードトーンのうち一番近い音を選ぶということ。
コードチェンジの時になかなかスムーズにアドリブが作れない時は、是非このコツを思い出してみて欲しい。
Root、3、5、7度
3、5、7、9度
この二つのコツを組み合わせて、リズムを加えると聞きやすくスムーズなアドリブができる。
例えばこんな感じ
とか、こんな感じ
この二つのコツが頭に入っているかどうかでアドリブの組み立て方や、メロディの作り方に大きな差が出てくるので、是非試してみてほしい!
レジェンド達のアドリブ(Autumn Leaves)
Bill Evans from Portrait In Jazz
Herbie Hancock from Miles in Berlin
Canonball Adderley from Somethin' Else
5連符をマスターする - The Rain Of May
『The Rain Of May 』
去年の今頃だったと思う。
朝起きたら東向きの窓から朝日が差し込んでいて、窓の外を見ると静かな雨が降っていた。
辺りは明るいのに優しい静かな雨が降っていて、それがとても心地よかった。
顔も洗わずにそのままピアノに向かって曲を作った。
一気に書いてしまったので、おそらく30分もかからなかったと思う。
それがこの曲「The Rain Of May」
その日の心地よさが曲に閉じ込められているみたいに、この曲を弾くとその日の匂いまで鮮明に思い出せる。
そういう意味で作曲は、その瞬間の情景を記録しておけるとても素敵なツールになり得ると思う。
5連符をマスターする
STEP 1 : 5連符の感覚に慣れる 難易度★
この曲は最初から最後まで5連符でできている。
5連符と聞くと難しそうなイメージがあるかもしれないけど、慣れてしまえば実はとても簡単に弾ける。
例えばこれが曲の出だし。
右手3音左手2音に分けて弾くように書かれているが、このように両手で分けてしまえば意外と簡単なのだ。
これでまず5連符の感覚に慣れていく。
STEP 2 : 5=2+3 難易度★★
次に16分音符5つ分の5連符を2+3のグループに分ける。
16分音符2つ分なので8分音符を使用しているが、ちゃんと2つ分頭の中で数えないとリズムが崩れてしまう。
リズムが崩れにくくなるように、右手の8分音符の部分に左手で16分音符を入れているので両手で弾けば2+3の綺麗な5連符になる。
STEP 3 : 5=3+2 、5=2+3 難易度★★★
先ほどと同じように今度は3+2のグループに分ける。
そしてさらに2+3のグループと繋げてみる。
16分音符3つ分=付点8分音符と、 16分音符2つ分=8分音符のみでメロディができている。
頭の中で5連符を感じていないとやはりリズムが崩れてしまうので、うまく左手の16分音符に合わせて弾くのがコツ。
ここまで弾ければ5連符をマスターしているはずなので、是非「The Rain Of May」に挑戦してみて下さい!
「The Rain Of May」の楽譜(PDF)はこちらからフリーでダウンロードできます。
スウィングとは?本当に3連符?
スウィングとはジャズ独特のリズムのこと。
ジャズの楽譜でよくこういうリズムの指示を目にすると思う。
でもココで言いたい。
この表記は間違いです!!
私はこの表記がたくさんの人にスウィングの誤解を招いていると思っている。
もしも私が大統領になったらこの表記を廃止したいくらい!
ではスウィングとはどう表記するのか、答えはこう。
何も変わらないじゃないかと思うかもしれないが、スウィングの秘訣は実はこの8分音符の場所にある。
スウィングの間
従来のスウィングは最初のSwing表記のように3連符だと考えられていた。
こんなふうに。
実際ビル・エバンスのスウィングはこの3連符に近い。
でも今はこういうスウィングを弾く人はまずいない。
ではどう弾くかというと、こういうふうに弾く。
拍のあたまにスウィングには欠かせない間が入る。
3連符ではなく、少し、ほんの少し遅れているevenの(均等な)8分音符。
そしてこのほんの少し遅れた間が、スウィングのリズムを作り出すのだ!
でもどうして世の中的に3連符がスウィングだと思われているかというと、スウィングした時の8分音符の裏拍が3連符の3番目の音とタイミングが非常に近いからだ。
しかもこの”スウィングの間”の長さは人それぞれ違う。
だからスウィングの仕方もプレイヤーによって異なってくるのだ。
ただ、ハービー・ハンコックもキース・ジャレットも3連符ではなく8分音符を弾いている。
3連符ではなく!
スウィングの間を弾く
STEP1:8分音符で弾く
STEP2:裏拍にアクセントをつける
STEP3:少し遅らせて弾く
これでスウィングの完成!
コツは十分に脱力してリラックスして弾くこと。
そして最高に気持ちいい自分のスウィングを見つけて下さい!
1小節のスケッチから曲を作る
私はよく思いついたフレーズや、コードを「作曲ノート」にメモしておく。
忘れないうちにと、いつも走り書きのように雑に書いてしまう。
こんな感じに。
今回はこの1小節の走り書き、スケッチから曲を作ってみた。
今回の私の作曲行程はこんな感じ
①スケッチを書く
②コードを決めてベースラインを作る
③イントロを作る
④アドリブを弾く
①スケッチを書く
私は譜面台に「作曲ノート」を置いて思いついたフレーズをいつでも書けるようにしている。
忘れないうちにメモできるので、これはとってもオススメ!
今回のフレーズは、1小節に12音ある8分音符の3連符を5:7に分けたフレーズだ。
アクセントは1番目と6番目の音符にきて、少しトリッキーな仕組みになっている。
でも不思議なことに意外と普通に聞きやすい。
②コードを決めてベースラインを作る
次に先ほどのスケッチの下にベースラインをつける。
ベースラインをつけるには、フレーズにあったコードを決めなくてはいけない。
今回はこんな風につけてみた。
これでメインのフレーズの完成!
③イントロを作る
次にイントロを作っていく。
メインのフレーズに入りやすいように同じく3連符で、しかし!リズムを変えて作ってみよう。
先ほどは全部で12音の3連符を5:7で分けたが、今回は4:4:4で分けていく。
④アドリブを弾く
ここまで来たらもうほとんど出来上がり。
あとは出来るだけシンプルにアドリブを乗せていく。
難しいことは一切なし。
ただただシンプルに。
こちらが完成した曲。
構造が分かっていると、聴こえ方も違ってくるかも!
Enjoy!!