「The Christmas Song」6連符を使いこなして空白マスターに!
The Christmas Song
”好きなクリスマスソング”で一番最初に思いつくのが、このMel Tormeの「The Christmas Song」。
タイトルからメロディが思い浮かばない人も多いかもしれないが、きっと耳にしたことがあると思う。
一番有名なのはきっとこのNat King Coleのバージョンかな。
とってもドリーミングでクリスマスの雰囲気にぴったりだ。
今日はこの曲をソロピアノで弾いてみよう。
アレンジのコンセプト
私はいつも個人的にアレンジを作るときには、必ずコンセプトというか目的を決めるようにしている。
これを弾けるようになれば、自然と何か新しい技術を身につけられるようなアレンジにするように心がけている。
今回のコンセプトは「6連符を使ってさみしい空間を華やかに!」。
(リフォームのうたい文句みたいだけど)
例えばソロピアノを弾くときにコードチェンジもメロディーも少なくて、何を弾けばいいかわからないことがよくあると思う。
そんな時は音数が少なくなってしまったりさみしくなりがちだけど、今回は6連符を使ってちょっぴり華やかにしてみよう。
実践
まず曲の出だしから見ていこう。
上段がオリジナルメロディ、下段が6連符を使ったアレンジ。
メロディが全音符で止まっているので、さみしくなりがちな空間を6連符で埋めてちょっぴり華やかにする。
次の例では、同じ音が1小節以上続き変化がなくやっぱりさみしいので、ここも6連符。
too muchなくらいてんこ盛りで確実に6連符マスターを目指す。
この曲のエンディングはNat King Coleをはじめ、ジングルベルのフレーズを使うことが多いので、おなじみのフレーズをキーを変えてアレンジしてみた。
もちろん終わりも6連符。
ソロピアノで演奏する時は、こういうちょっとさみしくなってしまう空間に出くわすことが多いと思うので、その解消法の一つとしてぜひ6連符にトライして見て下さい!
*販売している関係で動画では楽譜を全部お見せできないのですが、よければこちらから購入できます。
「Renewal」 ピアノの向こうで息をひそめていた話
猫アレルギーなのに
ちょうど去年の今頃、猫を飼い始めたせいで肺炎になりかけてしまった。
毎朝病院で吸入をしないと息ができないほどで、咳がすっかり取れるまでずいぶんかかった。
とくに笑うと咳が止まらなくなるので、なるべくつまらない生活をしようと心がけていた。
そんな時、ピアニストの友人に誘われて彼女のレコーディングに同行することになった。
嬉しくもちょっと困ったありがたいオファー
ニューヨークから少し離れたレコーディングスタジオには、プロデューサーとエンジニア、そして演奏するメンバー(友人がリーダーのピアノトリオ)が集まっていた。
ピアノ、ベース、ドラムがそれぞれのブースに入って私はコントロールルームで演奏を聴かせてもらう事になった。
そこで彼女が私に、1曲だけどうしてもピアノブースで聴いて欲しい曲があると言った。
その曲は今回のアルバムのタイトルにもなった、ソロピアノのオリジナル曲だ。
万が一レコーディングの最中に音を立てでもしたら台無しになってしまうので、プロデューサーはもちろん反対だった。
困った・・・
咳が出るかもしれない・・・
でも彼女のレコーディングを間近で聴けるなんて・・・こんなチャンスない!
そこで、私は咳どめのガスを少し余分に吸ってピアノブースに入ることにした。
困ったときの村上春樹
苦々しい顔のプロデューサーを横目にブースに入ると、グランドピアノでいっぱいのその部屋にはそもそも私がいるようなスペースなんてなかった。
椅子も見当たらない。
仕方ないので、私は彼女の足元のあたりに座ってじっと息をひそめ、なるべく咳から意識を遠ざけようと村上春樹のフレーズを思い出していた。
(つまり、”夏の午後の冷蔵庫の中にあるきゅうり”のことを考えていた)
冷静に考えるとわりと妙な光景だ。
レコーディングの最中に、ピアニストの足元に”夏の午後の冷蔵庫の中にあるきゅうり”のことを考えながら咳をこらえてる猫アレルギーがいるなんて。
Renewal
そんな妙な光景からは考えられないほど彼女の演奏は素晴らしく、その曲は1takeで終わった。
(おかげでレコーディングを台無しにすることもなく、これ以上プロデューサーににらまれることもなかった)
演奏が始まって1小節もしないうちに、冷蔵庫のきゅうりなんて簡単に吹き飛ばされてしまうほど彼女の演奏は圧倒的に美しかった。
心の底のあたりを温めてくれるような、優しくそっと前へと押し出してくれるような、そんな演奏だった。
曲の最後には、彼女のイタズラっぽく少し得意げな笑顔そのもののようなコードが添えられている。
リニューアルしたい方にも、そうでない方にもぜひこの「Renewal」を聴いてみてほしい。
そしてその際には、ピアノの向こうでじっと息をひそめている私の存在も頭の片隅に思い浮かべいただきたい!
もしかしたら気配くらいはするかもしれないので、よーく耳を澄まして聴いてみて下さい。
*日本のアマゾン、iTunesで視聴できます!*
アマゾン
iTunes
猫の話 もっち1周年記念!
去年の11月にマンハッタンのシェルターから3歳半の女の子の猫を引き取った。
もともと猫が大好きだったのだけど、猫アレルギーだから飼うなんて無理だなと諦めていた。
しかーし、ニューヨークの猫カフェに行ったのをきっかけに、ついに猫愛が抑えられなくなり我が家に迎えることになったのだ!
もともと”Ramona”という名前がついていたが、あまりにも気高すぎて気軽に呼べないので、我が家では”もっち”と呼んでいる。
来たばかりの頃は子猫みたいな顔でビクビクしていたが、今となってはこの家の主のような顔をしている。
これがうちに来た次の日のもっち。
一週間後のもっち。
この頃にはもう慣れて来て、私の仕事の邪魔をする事を覚え始める。
できるだけ長く伸びてできるだけたくさんの鍵盤を隠す。
そして寝る。
今となっては猫を飼っているというより、猫の世話をさせていただくという圧倒的な上下関係が出来上がってしまった。
なんのためらいもなく寝てる私のお腹を踏んづけたり、髪の毛をガジガジ噛んだり、夜中にとんでもない勢いで走り回ったり。
しかし、かわいい。
かわいすぎる。
猫アレルギーなので、最初の頃は咳がひどく肺炎になりかけてしまった事もあったけど、今ではほとんど症状も出なくなった。
(肺炎になりかけたせいで、咳を我慢しながらレコーディングスタジオの隅で体育座りをするという妙な体験をすることになったが、この話は長くなるので次回にしよう。)
うちに来てくれてから一周年記念なので、いつもよりいい猫缶を買って、いっぱい遊んで、うんと甘やかしてあげよう。
Happy Thanksgiving!!!
コルトレーンチェンジ 応用編②作曲に取り入れる
更新が随分遅くなってしまいましたが、前回、前々回のコルトレーンチェンジのつづき。(とりあえずのコルトレーンチェンジ完結編)
今回はコルトレーンチェンジのアイディアを使って曲を作ってみる。
まずはコルトレーンの曲を見ていこう。
Countdown
1段目には3つのメジャー7のコード(maj7)が出てくる。
2小節目のB♭maj7、3小節目のG♭maj7、それと4小節目のDmaj7。
この3つは前回、前々回から何度も出てきているが長3度の関係にある。
次に2段目を見ていくと、同じようにA♭maj7、Emaj7、Cmaj7の3つのメジャーコードが出てくる。
こちらも長3度の関係にあるが、1段目と別の種類の長3度グループだ。
3段目は1段目と同じ種類のメジャーコードが順番を変えて、G♭maj7、Dmaj7、B♭maj7の順に出てきている。
そして4段目は、1〜2小節目のコードと同じ。
もう少し詳しく書くとこんな感じになる。
大きく見ると、ツーファイブワン(Key D: Em7 - A7 - Dという終止の形)のツー(Em7)とファイブ(A7)中に2回の転調が入っている形になる。
今回はこのアイディアを元に曲を作っていきたいと思う。
作曲
工程1:好きなキーを3つ選ぶ
コルトレーンチェンジでは長3度の関係にある3つのキーを使っているが、そのままだとあまりにもコルトレーンチェンジそのものになってしまうので、自分の好きなキーを選んで自分の『MYチェンジ』を作ってしまおう。
今回私が選んだのはC、E♭、B♭の3つ。
私の大好きなマイナーセブンコードの構成音だ(Cm7の1度、♭3度、♭7度:)。
工程2:同じ形の他のグループを作る
1で選んだC、E♭、B♭と同じ形のグループを他にいくつか作る。
いくつでもいいのだけど、今回は短3度づつ上に重ねて全部で4グループを作った。
① C、E♭、B♭
↓ (短3度上)
② E♭、G♭、D♭
↓ (短3度上)
③ G♭、A、E
↓ (短3度上)
④ A、C、G
工程3:Countdownの要領でコードを並べる
まずはCountdownと同じ要領で先ほど選んだコードC、E♭、B♭を並べてみる。
次に、代理コードやIIm7(IIm7 in keyC=Dm7)を加えたりして自分の好きなように調整する。
工程4:メロディーをのせる
ここが一番楽しいところ!
コードが決まったら、その上に好きなメロディをのせていく。
転調が多いので、不自然にならないようになるべくコードトーンに沿ってのせていくのがコツ。
あと、転調する時に次のコードとの共通音でメロディをつないでいくと自然な流れに聞こえる。
最後にタイトルをつけて出来上がり。
11月なので「I remember April」的に「I remember November」にしようかと思ったけど、語呂がいいので『Remember November』に決定。
(私はいつもこんないい加減な感じでタイトルを決めてしまう。。)
こちらが完成した曲
コルトレーンチェンジを知らなければ、こういうコード進行の謎を解き明かす事は難しいかもしれないけど、3回にわたって理解を深めてきた私たちは、もうこのコード進行のトリックを見破る事ができる。
「あれれ〜?おかしいなぁ?コルトレーンチェンジみたいになってるよ〜?」っていう具合に小柄な名探偵ごっこもできる。
複雑に見えるかもしれないけど、今回作曲に使ったように"コルトレーンチェンジ的なアイディア"だけならきっともっと手軽に使えると思うので、ダイアトニックだらけの曲作りから脱け出したい人はぜひ、ぜひ試して見て下さい!
そして今回伝えきれなかったコルトレーンチェンジのお話は、またの機会に!
コルトレーンチェンジ 応用編①アドリブの作り方
前回のコルトレーンチェンジのつづき。
(前回のコルトレーンチェンジしくみ編は→こちら)
今日はコルトレーンチェンジを使ってアドリブを作っていこう。
アドリブの作り方
1コルトレーンチェンジ
まずは、ツーファイブワン(Key C: Dm7 - G7 - Cという終始の形)でコルトレーンチェンジをマスターしよう。
1段目が普通のツーファイブワンでのアドリブ。
2段目はC→A♭→E→C周り、3段目はC→E→A♭→C周りのコルトレーンチェンジを使ってアドリブを作ったもの。
ただコードトーンをなぞっただけなのに自分ではなかなか思いつかないような新しいフレーズができる。
アドリブ作りに行き詰まっている方は是非試してみてほしい。
実際の曲に使うとこんな感じになる。枯葉 (in Gm) 最初の4小節
1段目はオリジナルのコードで、全てB♭のダイアトニックコードだから全部ピンク。
2段目、3段目はB♭の長3度グループB♭、D、G♭をそれぞれ移動している。
実際に音を出してみるとわかるけど、コルトレーンチェンジを使ってアドリブを作ると、とても面白いフレーズが作れる。
もしあなたが誰かと演奏している時にコルトレーンチェンジを使ったアドリブを演奏したら、きっとみんなハッと驚くこと間違いなし!
曲によってツーファイブワンの長さや位置が変わってくるので、まずはじっくり考えてうまく当てはまるように作ってみよう。
2コルトレーンチェンジ+代理コード
次に、代理コードを使ってコルトレーンチェンジを更に変化させてみよう。
(代理コードとは→こちら)
代理コードは3全音(増4度)の関係にあるから、G7→ D♭7になる。
コルトレーンチェンジの他のキーはそれぞれ、E♭7→ A7、B7 → F7となる。
代理コードを使ったコルトレーンチェンジでアドリブを作ってみるとこんな感じになる。
5度7thから1度(V7- I)の形が2度♭7thから1度(II♭7 - I)になるので、ドミナントモーション色がだいぶ薄くなり、また一味違ったサウンドになる。
あなたはどっちの方が好きだろう?
3ドリアン的コルトレーンチェンジ
個人的にはこれが一番やりやすくて考えやすくてオススメ。
ドミナント7thを全部取っ払っちゃって、ドリアン(2度マイナー)だけで考えちゃうやり方。
これだと1小節にコードが1つだから、少し余裕を持って考えることができる。
特に速いテンポの曲の時なんかは、こちらの方がオススメ。
これはドリアンだけを繋いだものだけど、ミクソリディアン(5度7th)だけを繋いでみてもいいかもしれない。
コルトレーンチェンジという一つのシステムを使っても、色々な方法でアドリブを作ることができる。
きっとまだまだ私の考えつかないような方法だって山ほどあるはずだ。
コルトレーンチェンジはいつもAdvanced Levelの話みたいに言われているけど、仕組みさえわかってしまえばそんなに難しくないので、ぜひぜひ挑戦してみてほしい。
自分なりのコルトレーンチェンジを使ったアドリブ方法が見つかれば、確実に300くらい(?)レベルアップするはず!
次回は、コルトレーンチェンジ応用編②作曲に使う!(10月中旬予定・・・かな)
コルトレーンチェンジ しくみ編
今年はJhon Coltrane没後50年という記念すべき年のようで、ニューヨークではあちこちでコルトレーンにちなんだコンサートが開かれている。
その中の一つ、Dave Liebman Big Bandのコルトレーンツアー最終日にDizzy's clubというジャズクラブに行ってきた。
Equinoxやseraphic lightなどのコルトレーンの曲を中心に、コルトレーン(あるいはJR東海)でお馴染みのMy Favorite Thingsなんかも、3/4拍子じゃなく4/4拍子のイケイケなアレンジで演奏していた。
友人であるピアニストのJim RidlがフューチャーされたNaimaなんてもう本当に鳥肌もので、改めてコルトレーンの曲の美しさを体感した。
今日はそのコルトレーン独特の美しさに迫るべくコルトレーンチェンジについて深めていこう。
しくみ
コルトレーンチェンジというのは、ざっくり言うと長3度の関係にある3つのキーを自由に移動するようなシステムの事
長3度の関係というのは、こういう事。
長3度の関係は、全部で4グループ作れる。
この同じグループ内を上手く移動していくと、あっという間にコルトレーンチェンジの出来上がり。
例えばkeyCのツーファイブワン(Key C: Dm7 - G7 - Cという終始の形)をコルトレーンチェンジにするとこうなる。
Cを含む長3度のグループは上の図にもあるけど、C、E、A♭の三つ。
ピンクの部分がC、イエローがE、ブルーがA♭。
Coltrane Changes1ではC→A♭→E→C、Coltrane Changes2ではC→E→A♭→Cと長3度のグループ内を一周している。
Coltraneの曲の中ではColtrane Changes1の形の方がよく使われているが、おそらくどっち周りでもいいと私は思っている。
仕組みが掴めたところで、実際のコルトレーンの曲を見ていこう。
Giant Steps
この曲の長3度グループはB、G、E♭の三つ。
コルトレーンチェンジを知らないと、なんだかやたらと転調するワケのわからない曲に思えるかもしれないけど、知っているととてもロジカルに作られているのがわかる。
見事なまでに三色に分かれている。
では、このコルトレーンチェンジを一体どう使えばいいのか?
次回はコルトレーンチェンジの応用編、アドリブと作曲に使う方法!(たぶん・・・)
#daveliebman #bigband #dizzysclub #celebrate #johncoltrane #amazing #pianist #jimridl
(前列の左の方でソプラノサックスを吹いているのがDave Liebman。ちょうどMy Favorite Thingsを演奏していた)
音のテクスチャー Stefano Battaglia
Stefano Battaglia (ステファノ・バッターリア)
イタリアのミラノ出身のピアニスト。
何年か前にECM好きのドラマーの友人にすすめられて聴いたのが初めてだった。
ECM的なサウンドはもちろん、テクニックも素晴らしいピアニストだ。
今日は彼のテクニカルな部分を音のテクスチャーとしてご紹介。
(前回の音のテクスチャーFederico Mompouはこちら)
The Real Meaning (Of the Blues) / Stefano Battaglia
まずは聴いてみよう→視聴
速くて何がなんだかわからないけど、とってもゴージャスでテンションが上がる。
音符だけみるとそんなに複雑ではないけど、これをあの速さで弾くとなるとなかなかのテクニックが必要だ。
右手と左手の音の振り分けが違うかもしれないけど、おそらくこんな感じだと思うので、今日はこのテクスチャーをマスターしていこう!
1. 分析
まずはどうなってるのか構造をみていこう。
右手は8分音符、左手は16分音符の6連符。
6連符の1つ目と3つ目が休符になっていて、ちょうど右手の8分音符の間に左手の音が2つ入るような形になっている。
これを弾いてみるとわかるのだが、両手の位置がとても近く最初は弾きづらい。
なので両手を前後?上下?に重ねるように弾くのがコツ。
ちなみに私は左手が上派。
2. 分解
弾きやすい形にして、練習用スケールを作る。
音数を減らしたり手がぶつからずに弾ける音を選んだり、とにかく自分が弾きやすい事が一番大事。
今回はCドリアンで練習してみよう。
ちょうど縫い物や編み物みたいな形だけど、左右1音ずつにしたので速いテンポでも弾きやすい。
まずはここから慣れてみよう。
これが弾けるようになったら、左手の音数を増やしていこう。
6連符にして左手2音。
32分音符にして左手3音。
あとは、右手の和音の音を増やしてみたり。
Cドリアンだと弾きづらいのでDドリアンに変更。
3. 再構築
スケールでマスターしたこの形を使って好きなフレーズを作っていく。
ちょっとトゲトゲした感じとかキラキラ系のフレーズもこのテクスチャーなら簡単に作れるし、ゴージャスに聞こえるのでみんなをハッとさせられる事間違いなし。
アドリブで使うならこんな感じとか
作曲だったらこんな感じとか。
是非Battaglia流テクスチャーをアドリブや作曲のアイディアに使って見て下さい!