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音楽をもっと自由に 〜音楽理論や作曲のこと〜

切ないクリスマスソング「River」

北国で育ったせいか、クリスマスにはやはりどうしても雪が見たい。

ニューヨークでは何回か雪が降ったものの積もる程ではないし、今日はずっと雨らしい。

夜更けすぎに雪へと変わればいいんだけど見込みは低そうだ。

そんな時いつも思い出すのが、ジョニ・ミッチェルの「River」。

youtu.be

It's coming on Christmas

クリスマスが近づいてくると

They're cutting down trees

みんなモミの木を切り倒し

They're putting up reindeer

トナカイを飾りつけ

And singing songs of joy and peace

喜びと平和の歌を歌う

Oh I wish I had a river I could skate away on

あぁ 川があれば滑っていけるのに

But it don't snow here

だけど ここは雪が降らない

It stays pretty green

いつまでも緑が残ったまま

I'm going to make a lot of money

一稼ぎして

Then I'm going to quit this crazy scene

こんなクレイジーなところ出ていくの

Oh I wish I had a river I could skate away on

あぁ 川があれば 滑っていけるのに

 

ジョニ・ミッチェルはカナダ出身だから、クリスマスにはやっぱり雪が見たくて、生まれ故郷が恋しくなったのかもしれない。

そしてそこにはきっと川があったんだろう。

ちょっぴり切ない曲だけど、少なくとも私には、鈴の音シャンシャンしてハッピーでたまらないよー!という曲よりこっちの方がしっくりくる。

クリスマスみたいなホリデーシーズンは孤独を感じやすくなると聞いた事があるから、こんなふうにそっと心に寄り添ってくれるような曲は貴重だ。

ジョニ・ミッチェルが、今年のクリスマスを雪景色の中過ごせていますように。

みなさんが素敵なクリスマスを過ごしていますように。

 

Merry Christmas!!

youtu.be

 

 

きよしこの夜の「魔の4小節」

バッハのインヴェンションくらいピアノが弾ける父に「きよしこの夜」のアレンジを頼まれた。

どうやらクリスマスに人前で弾く事になったらしい。 

「きよしこの夜」と言えば、クリスマスソングの定番中の定番。 

でも、実はこの曲、アレンジが地味に難しい。

なぜなら、最初の  ”きーよぉしー こーのよーるー”  の部分は、同じコードが4小節も続いていて変化を出すのが難しいからだ。

itunesやYoutubeなどでいろんな人のアレンジを聴くと、この4小節にいろんな工夫がされていてとても面白い。

シンプルに同じコードを引き続ける人もいれば、ダイアトニックにそってコードを上昇or 下降してみたり(ex. C Dm Em...あるいはC Em/B Am...みたいに)、全く新しいハーモニーになっていたり、ウォーキングベースやブルースっぽくアレンジされているものもたくさんあった。

みんなこの「魔の4小節」に試行錯誤しながら挑んでいる。

 

私なりの「魔の4小節」はこんな感じ。

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気をつけた点

・メロディを壊さないようになるべくシンプルに

・元のコードから離れすぎない

・1−2小節目と3−4小節目が全く同じコードの繰り返しにならない

・5小節目のF7にスムーズに動ける

・ちょっと練習すればすぐに弾けるくらいの難易度

 

ダイアトニックだけど、これだけコードの変化があれば飽きないと思う。

楽器がある方は是非この「魔の4小節」に挑んでみて下さい!

 

ところで、父は弾けるようになったのだろうか・・・

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音のテクスチャー Federico Mompou

テクスチャー

テクスチャーを辞書で引くと、生地、手触り、感触、質感などが出てくる。

それだけ聞くと音楽とは何も関係がなさそうだけど、「テクスチャー(Texture)」という言葉は音楽をやっていると、意外とよく耳にする。

例えば「もっとピアノらしいテクスチャーをストックしておいた方がいい」とか、そん感じによく聞くフレーズだ。

 

音のテクスチャー

たとえば服を作るとか、何か手で触れるものを作る場合の「テクスチャー」は辞書通りの意味でわかるけれど、音になるといまいちピンと来ないと思う。

でも音にも質感があると思いませんか?

たとえば高音域で弾くとキラキラした感じがしたり、低音域で弾くともっと温かみが増したり。(あくまで個人的な見解だけども・・)

音は手で触れないし見ることもできないけど、質感のようなものは存在するはずだ。

コットンやメタルや木だって、どうにかすれば弾けるかもしれない!

音のテクスチャーとは、そういったいろんな質感を出すフレーズだと私は思っている。

 

テクスチャーの作り方

①気になるフレーズをさがす

とは言っても、実体のないものをどうやって作ればいいのかわからない。

そんな時私は、自分の好きな作曲家や曲の印象的なフレーズを借りてくる。

今日はフェデリコ・モンポウ(Federico Mompou)先生の曲を参考にしてみる。

Suburbisの1番、動画の2:19あたり。


低音域から高音域に駆け上がるフレーズ、これを今日の「テクスチャー」にしようと思う。

このフレーズはとてもピアノらしくインパクトもあって華やかなのに、右手と左手を交互に弾くのでそんなに難しくない。

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左手と右手を交互に弾きながら、オクターブ上の全く同じ音を弾いている。

ちょっと試してみるとわかるけど、本当にそんなに難しくない。

 

②自分の好きな音に置き換える

構造が分かったら、次は自分の好きな音にかえてみる。

好きなコードでもスケールでも、なんでもOK。

ただ肝心なのは、自分が弾きやすい事。

これが意外と難しかったりする。

私が置き換えたのはこんな感じ。

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コードとしてはA♭m7

左手が3音、右手が4音で構造は全く一緒。

これでオリジナルテクスチャーが1つ完成。

簡単に弾ける割にはゴージャスに聞こえるので、Am♭7の時にオススメ。

 

③構造を少し変える

さらに発展させたい場合は、音だけでなく構造自体も少し変えてみる。

たとえば音の数を変えてみる。

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これは左手も右手も3音づつで、コードはC7♭9#11。

もっと簡単に言うとCトライド(3和音)の上にF#トライアドを乗せたものだ。

コード感がはっきりしているので、使いやすいと思う。

 

④もっともっと構造を変える

さらにさらに発展させたい場合は、さらにさらに構造を変えてみよう。

音数を左手2音右手3音に変え、右手を固定したまま左手に動きを出してみた。

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次は逆に左手を固定し右手に動きを出してみた。

このままでも十分曲になりそうな効果的な「テクスチャー」ができたと思う。

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たったこれだけの作業でも幾つかのテクスチャーを作る事ができる。

次の作曲や演奏などの機会に、ぜひ「自分のテクスチャー」を織り交ぜてさらにカラフルな曲にしてみて下さい!

 

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Robert Glasperを弾く「Baby Tonight」

ジャンル:ロバート・グラスパー

ロバート・グラスパーは私の好きなピアニストの中でもかなり上位だ。

Balck Radioが出るたびに本当に飛び跳ねるくらい喜んでいる。

何度か機会を逃してしまい、まだ一度しかライブに行った事がないのが残念。

今年は無理でも来年は行こう、必ず行こう!

グラスパーの音楽は何と言っても、カッコイイ!!!

これはジャズだとかヒッピホップだとかに分類するのはナンセンスに思えるほど、彼の音楽はグラスパーそのものなのだ。

我々はついついジャンルに分けたがってしまうけど、私はどちらかというとアーティストそのものが一つのジャンルのように考える方が好きだ。

ビル・エバンスはモダンジャズだけど、どう考えたってそれだけじゃない、彼の音楽はジャンルとしてもビル・エバンスなのだ。

 

グラスパーヴォイシング

グラスパーのカッコよさの肝と言ってもいいのが、彼の美しいヴォイシングだ。

Black Radio2の「Baby Tonight」のヴォイシングを解析してみよう。

コードはほとんどAm7 F#m7 CM7で、ブリッジをはさんでこのコード進行を3パターンのヴォイシングで演奏している。

まずは1つ目

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m7コードのヴォイシングは下からR(Root),7,9,3,11

5度が入っていない代わりに11度が入っているところはビル・エバンスのヴォイシングに近いと言える。

CM7には5度も6度も7度も入っていて、もう全部乗せ状態だ。

 

2つ目

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2つ目のパターンのm7コードのヴォイシングは下から7,9,3,5,7,9,11

かなり音数が多い。

左手は基本的なルート抜きのヴォイシングで、右手はそれぞれG,Eのトライアド(3和音)を押さえている。

やはり印象的なのは11度だが、今回は5度も入ってかなり厚みがある和音になっている。

CM7は9度も加わって、全部のせデラックス状態だ。

 

3つ目

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どれもかなりシンプルになった印象だ。

M7もテンションがなくコードの原型に近い。

 

まとめ

この3つのパターンからグラスパーのヴォイシングの特徴を探すなら、

・m7に11度を入れる

・M7には5度と6度と7度を一緒に入れる

・必ず半音を入れる

こんな感じではないだろうか?

この3つのパターンでこの曲のほとんど弾けるので、ぜひグラスパーと一緒にグラスパーヴォイシングを体感してみて下さい!ぜひ!!

そして、もしm7コードを弾く機会があれば11度をそっと忍ばせてみて下さい。

www.youtube.com

(マイクチェックもグラスパーにかかればこんなにカッコよくなるのか・・・)

 

3と4の最小公倍数は13?!

今日は簡単な算数から始めよう。

最小公倍数。

小学校で習ったと思うけど、それぞれの数字の一番小さな共通する倍数の事。

たとえば2と3の最小公倍数は6、そんな感じ。

では3と4の最小公倍数は?

12?もちろん12、数学的には。

ただ、音楽的には13と覚えているといいかもしれない!・・?!

 

問題1:4拍子の上で3拍子のフレーズを演奏すると、次に1拍目で出会うのは何小節目?

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上が簡単な4拍子のフレーズ、下が3拍子のフレーズ。

1拍目から一緒に弾き始めると、次に1拍目で出会うのは2つ目の黄色の所になる。

そこまで4拍子の四角形が3つ、3拍子の三角形が4つ、つまり

3と4の最小公倍数=12だ。

がしかし!出会う拍は13拍目なのだ!

ココ、意外とみんな間違って覚えていたり数えていたりするので、とても重要!

答え:3小節目

 

問題2:4拍子の曲で、12小節のうち4拍子のフレーズと3拍子のフレーズが1拍目に出会う箇所は何箇所?

 

4拍子で12小節なので拍は全部で48拍ある。

そのうち、3と4の公倍数(12の倍数全て)は最小公倍数の12と24、36、48になる。

なので4箇所出会うはずだ。

それでは見ていこう。

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13拍目の4小節目と、25拍目の6小節目と、37拍目の9小節目と、49拍目の・・・49拍目で出会うはずだが、それは13小節目になってしまうのでここにはない。

じゃあ3箇所しかないかと思ったら、計算上では1拍目を見落としてしまっていた。

そう、頭で計算するとどうもズレてしまうことが多いので、これは視覚的に覚えた方がいいと思う。

答え:4箇所

 

それにしても、こんなものどう使うのかと思っていませんか?

そんな方には是非これを聴いていただきたい。

この曲は12小節のマイナーブルースを変形した曲で、ピアノのソロの最初の数コーラスだけピアノは4拍子、ベースとドラムは3拍子という、なんともトリッキーな演奏をしている。

是非みなさんも、スコット・ラファロとポール・モチアンと一緒に4拍子の上で3拍子を数えながら、3と4の公倍数+1の場所でビル・エバンスと出会ってみて下さい。

youtu.be

サークルオブ5thで図形を描く

今日は息抜きにお絵描きします

サークルオブ5thの事を知っている人はたくさんいると思うけど、それで絵を描く人はなかなかいないかもしれない。

ということで今日はサークルオブ5thを使って図形を描いていこう!

(サークルオブ5thに聞き覚えのない方はこちらを参考に)

 

正三角形

12音を3当分して三角形を作っていこう。

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正三角形は全部で4つ作れる。

それを全部重ねるとこんなかわいい感じになる。

三角形で結ばれた三つの音は、それぞれコルトレーンチェンジ的な関係にある。

つまり、音程でいうとそれぞれが長3度の間隔になっている。

 

 

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正方形

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12音を4当分するので、3つの正方形ができる。

結ばれた4つの音は全て短3度の関係、つまりディミニッシュになる。

ピンとこないかもしれないけども、これがサークル5thにおけるディミニッシュの図形なのだ。

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メジャースケール

次にスケールの図形を見ていこうと思う。

まずは、Cメジャースケールの音をつないだ図形。

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この図形はキーが変わっても形は変わらずに回転していくようになる。

たとえばBメジャーのスケールと並べるとこんな感じ。

個人的にとても好きな感じの図形だ。

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Cメロディックマイナー

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Cハーモニックマイナー

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Cハーモニックメジャー

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ハーモニック系はクレーの天使シリーズみたいでちょっとかわいい。

 

半音階

そして最後に半音階の図形。

もう完璧な美しさ!!!

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ぜひみなさんも色んな図形を描いて、音を出してみて下さい!!

 

Happy Thanksgiving!!!

裏コード?代理コードを使いこなす!

トライトーン(Tritone)

代理コード(裏コード)とは何かという前に、トライトーンとは何かから始めよう。

直訳すると、トライ(tri-):3全音の、トーン(-tone):音。

全音というのは半音2つ分だから、3全音というのは半音6つ分の事。

ド(C)から数えるとファ#(F#)になる。

要するに増4度の音程を持つ二つの音の事。

そして、ドミナント7thは3度と7度に必ずトライトーンが入っている。

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サークルオブ5th

個人的に、私はサークルオブ5thが大好きなのだ。

暇さえあれば、サークルオブ5thを前に何やら落書きをするのが私のお気に入りの時間。

そもそもサークルオブ5thとは何かというと、12音名が5度づつ並んでいる円の事。

ただ、クラシックなどでは時計回りに5度上がっているものが多いが、ジャズの世界では時計回りに5度下がりになっている。

なぜかというと、ジャズでは#よりも♭が出てくる事が多く、ジャズでよく使うドミナントモーションが時計回りになるからだ。

要するにジャズをやる人にとっては馴染みやすいのだ。

*ドミナントモーション:ドミナント7thから解決する動きの事。

例:G7→C、C7→Fなど

 

 

 

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あとは、#や♭の調号の順番などもこのサークルで覚えられる。

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でも今日はトライトーンをサークルオブ5thで見て行きたい。

トライトーンは最初に言った通り3全音、つまり半音6つの音程を持っている。

オクターブは12音でできているから、ちょうど2等分という事になる。

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代理コード(Tritone Substitution)

substitutionというのが、置換、代理という意味になる。

上記のトライトーンをそれぞれドミナント7thに当てはめたものが、代理コード(裏コードとも呼ばれる)になる。

ちょうど3度と7度がひっくり返るような形になる。

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これをサークルオブ5thで見てみると、こんなふうになる。

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つまり、A♭7の代わりにD7を弾いてOK!!という事。

信じられないかもしれないけども、いいんです。

ちょうど反対側にあるものは、G7→D♭7、F7→B7みたいになんでもガンガン弾いちゃっていいんです!

最初は耳的に違和感があるかもしれないけど、トップの音がスムーズに動くようにすればいい感じになるはず。

演奏や作曲にも使えるので、楽器の近くにサークルオブ5thを貼っておくのがオススメ

貼り用↓

多分次回は、これで絵を描く!?たぶん

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